◇10月28日・ぶっとび、ドイツの朝食はすごいよ?◇



 AM6時30分、モーニングコールのベルが鳴る。このホテルのそれは、普通に電話で「グッモーニン」とメッセージテープを繰り返し流すものだった。
 驚きだったのはレストランでの朝食。バイキング形式での食事はわかるが、日本と違ってハムやベーコン、ソーセージやスクランブルエッグはあっても野菜が全くない、という首を傾げたくなる品揃えだった。この、朝食に野菜が一品もないというのは、その後泊まった全てのホテルで共通した。ドイツの朝食とは、そういうものなのだろうか?
 然るに何より我々を驚愕させたのは、どんと大皿に乗せられ存在を主張している、愛しのウォル……もとい、ウォルナッツ(胡桃)ケーキの砂糖がけである。こっ、これはデザートではないのだろうか。これが主食か? 主食なのか?
 見れば、隣のかごに入っている黒パンにも、たーっぷりとろりとした砂糖がかけられている。どこに触れても指がべたつく程に。その上、これを付けて食べろと言わんばかりにテーブルに並べられた、壺の中のジャムの数々!
 ちょっと待て。このただでさえ甘いパンやケーキに、更に甘いアプリコットやラズベリーのジャムを付けて食べろと言うのか? せめてマーマレードはないのかっ! 普通の食パンは? フランスパンでもいい、バターを塗って食べさせてくれっ!
 ……なお、朝食がケーキというのは別にこのホテルに限った事ではなく、翌日のホテルでも甘々のスポンジケーキが我々を待っていた。ひゅるりら〜
 結局、この日の朝食は生ハムとチーズ、美味だが激甘のウォルナッツケーキの砂糖がけと、同じくめちゃ甘なパインヨーグルトにオレンジジュースだった。スープの類いは、全く見当たらなかった……。ドイツの平均的朝食がこれだったら、間違いなく将来糖尿病一直線だぞ、ドイツ人! 私が心配する事じゃないけどさ。
 とにかく、そんな甘々の朝食を終えホテルを出発してドライブする事数時間、11時にかの有名なディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなった白鳥城(ノイシュヴァンシュタイン)に到着する。
 このお城は、もう何というか、凄まじく金をかけた代物だ、としか言えない。鍾乳洞を模した廊下を作ったり、音響効果を計算し尽くしたオペラを観賞する為の広間や、数百名分の料理が一度に調理可能な近代的厨房を作ったりと、とにかく溜め息ものである。召し使い(侍女達)が暮らしていた部屋や寝室も見せられたが、日本の庶民の部屋より遥かに立派で家具も高級、おまけに広い。羨ましくなる程であった。
 こんな金食い虫なお城を二つも三つも続け様造られた日には、税金を徴収される国民はたまったものじゃない、と思ったがその困ったちゃんな王様は、若い頃は理想主義で民衆の声に耳を傾けたいと願い、平民と直に接する事を望んで行動していたというからわからない。どうして彼は民衆の声が聞こえない世界へ行っちゃったのか、などと考えさせられたひとときであった。
 それにしても城の中から見る景色の美しいこと! こんな場所で暮らしていたら、下界の庶民の生活なんて考えられなくなるのは無理もないかもしれない。
 城からの帰りは、ちょっと贅沢に馬車に乗って坂道を下った。色とりどりの枯葉が風に舞う中、馬の蹄が地面を踏み鳴らす音は耳に心地好かった。しかし、昔の人は資材を抱えながら現在のように舗装などされていない道を歩いて上って、山頂にあのような城を建設した訳だから、タフだったんだなぁ。
 ちなみに馬車の料金は4マルク(約200円)。ホテルのレストランで飲むカプチーノ1杯の値段と同じである。なお、日本では2000円以上取られるサイズのピザも、10マルク(約500円)払えばドイツではレストランで食べられると知った。シンプルなトッピングのピザなら更に安く、400円程度で済む。
 ドイツ人はケチではない。直径30センチの皿からはみ出してる巨大なピザと、大きなボウルに入った1人前のサラダ(具はトマトとレタスとキュウリ、スライスしたゆで卵とハムとチーズ。塩味のドレッシングがかかっていた美味な一品)の夕食を前にして、しみじみ思った次第である。しかし、5人で分けてしかも2回ずつおかわりしなければ食べ切れなかったサラダが1人前って、ドイツ人の胃袋の容量はいったい……?



ドイツ・ホテルの窓からの風景(下は土産物屋だった)

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